投稿者
メール
題名
*内容 入力補助画像・ファイル<IMG> youtubeの<IFRAME>タグが利用可能です。(詳細)
URL
sage

  • [42]
  • 藤野邦夫『前立腺ガン 最善医療のすすめ』とStone氏の講演の類似

  • 投稿者:
  • 投稿日:2016年 4月 4日(月)14時19分42秒
  • 編集済
 
藤野邦夫『前立腺ガン 最善医療のすすめ』実業之日本社を、再読、再再読し、精読した読後感想を延々とブログに15回にわたりアップしました。
なお、私の読んだのは「2013年6月4日 初版第一刷発行」です。

細かい指摘は別として、私自身に一番関心のある前立腺が動くことに関しては「前立腺が動くことに関しての外照射の精度」と題して掲示板にも投稿しました。

ひとわたり、ブログでの記載が区切りがついたところで、私にとって書き続けたことについて、どうしてそこまで一生懸命になったのか気がぬける事実をみいだしましたので、スレッド本体ではなく、「論文・詳細スレッド」に少し長くなりますが書いてみます。

それは藤野邦夫氏の著作とStone氏の講演の類似と藤野氏の臨床試験番号の記述間違いといったことです。


Stone氏の講演記録
ハイリスク症例に対する密封小線源療法の可能性 講演:Nelson N. Stone MD
2008.12月作成


なお、この講演はWebサイトに掲載されています。
ハイリスク症例に対する密封小線源療法の可能性 前立腺がんの小線源療法 日本メジフィジックス株式会社

このページは私が最初に掲示板に2014年8月25日に投稿した後、GANBA-SETA さんが2014年8月26日の投稿で「次の資料も大いに役立ちましたので、ご参考までに。」という紹介文とともにURLを書き紹介していただいたものです。
既に藤野氏の著作との類似はGANBA-SETAさんはご存じで、今頃、気づいた私が遅いのかもしれません。

A
Stone氏の講演記録

ホルモン療法 + 外照射療法
よく引用される研究で、多くの放射線腫瘍医が外照射療法と長期
ホルモン療法を併用する根拠にしているものに、RTOG 9202の研究
があります。これは高リスク前立腺癌に対して2年間のホルモン療法
と放射線療法を併用しPSA非再発率をみたもので、線量は65~70Gy
です(図8)。2年間のホルモン療法と併用しても5年目には、50%
の患者が再発しています。ここから読み取れるメッセージは、たし
かにホルモンは有効かもしれませんが、不十分な放射線量を補うこ
とはできないというものです。


藤野氏の著作

P.266
長期のホルモン療法と外部照射を併用する治療法については、アメ
リカのRTOG-9209という研究が知られている。
これは高リスクの前立腺ガン患者にたいして、外部照射と2年間の
ホルモン療法を併用した治療法の研究だった。外部照射の線量は
65~70グレーだったが、5年めには50%の患者が再発したのである。
このデータでは長期のホルモン療法をしても、外部照射の線量の
不足を補えないことが示されている。


B

Stone氏の講演記録

前立腺全摘除術 + 補助放射線療法
Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)のDr. Michael
Zelefskyは、中間~高リスク前立腺癌の場合、放射線療法の線量を
上げるほど(最高で81Gy)優れた結果が得られることを明らかにし
ています。しかし81Gyであっても、まだ12%の患者では前立腺癌が
残存していました(図7)。つまり、この限局性疾患の全てを根絶する
には、81Gyでは不十分だったのです。


藤野氏の著作

P.149~P.150
アメリカのメモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(MSKCC)
のDr.マイケル・ゼレフスキーは中リスクと高リスクの患者を対象に
最高で81グレーを照射しても、12%の患者に前立腺ガンがのこったこ
とを、2001年に明らかにした。


藤野氏の表現を盗作、あるいは剽窃 1) とよんでいいのか私にはわかりません。ただ、いえることはStone氏の講演記録を大いに参考にしただろうということです。

藤野氏の著作のP.265にはStone氏の講演、「前立腺全摘除術 + 補助放射線療法」で言及されたSWOG-8794についても書かれています。
ただし、これはStone氏の講演と違った表現です。


まず、 A から
Stone氏は講演で、論文 2) より図をあげて説明しています。
藤野氏の著作には書かれていない文、「よく引用される研究で、多くの放射線腫瘍医が外照射療法と長期ホルモン療法を併用する根拠にしているものに、RTOG 9202の研究」について書きます。
根拠といっていますので、NCCNガイドラインを調べました。
2014年版、及び2012年版に高リスクまたは超高リスク患者に対するホルモン療法を併用するのに短期より長期のほうがいいということのエビデンスとしてRTOG9202はあげられています。 3)
なお、NCCNガイドラインではStone氏のあげた論文ではなく、その後をフォローした2008年の論文 4) が参考文献としてあげられています。

このように結構有名な臨床試験、RTOG 9202 (論文の表記では92-02)ですが、藤野氏はRTOG-9209 と間違えて記述しています。

RTOG-9209 で検索したところ、見つかったものは"pancreatic cancer"、膵臓癌に関する論文でした。 ??? といったところで、なぜこのような大事な臨床番号を間違えるのかと思いました。そうして著作への執筆姿勢といったものを疑いを持ち始めました。
単純なミスだとしてもとうてい看過できないものです。医学論文ではないのでそんなに厳密である必要はないですが、間違ってはいけないところを間違えていると思いました。
そのような本を時間をかけて読み、論評したこと自体がバカバカしいと思いました。

その後、Google検索で「トリモダリティ」で検索したところ、上記の日本メジフィジックス株式会社のページがみつかり、正しい臨床試験番号とStone氏の講演との類似が分かったということです。

次にBについて
Stone氏は講演で、論文 5) のFIG.3. とTABLE 2.により説明しています。
Aの場合と同様に藤野氏が言及していないStone氏の講演記録の文を書きます。
「中間~高リスク前立腺癌の場合、放射線療法の線量を上げるほど(最高で81Gy)優れた結果が得られることを明らかにしています。」
これはFIG3. からの帰結することのようで次の文は少し複雑です。
「しかし81Gyであっても、まだ12%の患者では前立腺癌が残存していました(図7)」

これはTable2の値から次のような計算で求められた値のようです。

低リスク  0/7  0%
中間リスク 3/18 17%
高リスク  1/16 6%
従って、 3+1/18+16 = 0.118 で 12%

論文のabstractでは放射線治療後、生検を受けた人が251人 いて、それを81 Gy、75.6 Gy、70.2 Gy 及び64.8 Gy で陽性になった人の人数、割合を提示していて、高線量が好成績ということをいっているものです。full text のTable2ではその各々の件数、割合が書かれていて上記のように計算して 12 % という値を求めたということです。

放射線治療後、生検をするのが一般的だったかどうかわかりませんが、その陽性である割合を提示して、中間リスク、高リスクにおいて81Gyでは不十分ということをStone氏がいっています。
藤野氏は似たような論(「残存していました」と「のこった」とは表現は少し違うが)をfull text を参照して導き出したのでしょうか。

少し煩雑になりますが、論文のabstractの概要を紹介します。

・ 1988年~1998年の 3D-CRTまたはIMRTで治療されたT1c-T3の患者 1100人が対象
・ 5年PSA非再発率
  低リスク  64.8~70.2 Gy 77%
        75.6~86.4 Gy 90%
  中間リスク 64.8~70.2 Gy 50%
        75.6~86.4 Gy 70%
  高リスク  64.8~70.2 Gy 21%
        75.6~86.4 Gy 47%

75.6 Gy以上の線量で治療したほうが、PSA非再発率がよかったという論文です。

藤野氏はP.150で先にあげた引用の文の後にこのように書いています。

「MSKCCは、いまでは86グレイ以上の線量を照射しているが、日本には、
そこまでの技術をもつ施設はないのではなかろうか。」

MSKCCは上記の論文では "75.6 to 86.4 Gy" と書かれていて、2001年の論文発表の時期にはすでに86.4 Gyで照射していることを認識していない文です。
すなわち、論文のabstractすら読んでいないと思われます。まして、full text を読み、計算したとは思われません。
Stone氏の講演の文(最高で81Gy)を当時の最高線量を81Gyと誤解したと思われます。

なお、藤野氏の「MSKCCののDr.マイケル・ゼレフスキー2001年に明らかにした」という文より、PubMedで"Zelefsky MJ[Author] "で検索し、Sort by First Author でソートし、2001年でZelefsky氏が筆頭著者になっている唯一の論文として上記のものをみつけましたが、abstractをみると12%というのもでてこないし、論文の主旨も違っているので、藤野氏が年を誤記したのかと思っていました。



1) Wikipedia:剽窃には以下のように書かれています。

剽窃(ひょうせつ,Plagiarism)は、他人の成果物をクレジット表示することなく取り込むことです。

2) Hanks GE et al. J Clin Oncol. 2003 Nov 1;21(21):3972-8

3) 2014年第2版

MS-14
高リスク群でのネオアジュバント/同時併用/アジュバントADTについては、短期より長期の実施を支持するエビデンスが多くなってきている。RTOG9202試験では、RT施行前から施行中にかけて4ヵ月間ADTを受けたT2c~T4の前立腺癌患者1,521人が対象とされた。被験者は治療を終了する群とさらに2年間ADTを継続する群とにランダム化された。

10年時点で、長期ADT群では全生存を除くすべてのエンドポイントについて改善が示された。さらにグリソンスコア8~10の患者だけを対象としたサブグループ解析では、 長期ADTの全生存における優位性が示された(32%vs  45%、P=0.0061)。

これは2012年版のMS-19でもまったく同じ表現です。

4) Horwitz EM et al. J Clin Oncol. 2008 May 20;26(15):2497-504.

5) Zelefsky MJ, et al. J Urol. 2001 Sep;166(3):876-81.



http://inves.seesaa.net/article/443112313.html